ナマケモノの飛行訓練

記憶のすべてがかすんでみえる。うろ覚えでつづるひこうくんれん。

癒やしはないが狼の眼をもっている。

今週のお題「私の癒やし」

 

 選挙と台風、退屈な日曜日。まずはこの日のことを見越して密かにxboxのマーケットを探してインストールしたゲーム。どんなにつまらなくてもわりと最後までプレイしてしまう性分、時間を無駄にしたくはないので、慎重に吟味した末の「ウィッチャー3」。ずっと気になっていたタイトルだ。追加コンテンツ付きでかなりリーズナブルな価格。

 

  昼過ぎに投票を済ませ、少し早めの夕食。れんこんの素揚げとクレソンのサラダ。それと近所の肉屋の唐揚げ。そいつをいつもの安ワインでやっつける。それから選挙特番がはじまる頃合いをみて、わたしはおもむろにゲーム機の電源をつける。

 荒涼とした大地。泥と血と炎。鉄の音。野蛮な男達のがなり声。それはこれからしばらく没入するであろうわたしの世界。黒いカラス。一頭の馬が戦場を駆ける。白髪の長い髪。逞しい躯。額から頬をかけた深い疵痕。金色の狼の瞳。わたしはウィッチャーのゲラルトとなり北の大地の旅をはじめる。

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 選挙特番は続く。北方での旅の傍ら、わたしは横目でそれを見る。賑やかしいテレビの喧騒。出口調査でも明らか。下馬評通りの結果。

 そもそもいったい何のための解散なのか。投票には行ったが今回の選挙には端から興味は無い。わたしがいま興味があるのはイェネファーの行方。選挙中はなぜか北からのミサイルは飛んでこない。だが今気になるのは、違う世界での北の戦争の行く末。ホワイト・オーチャードの北の民たちの暮らし。

 次々に報道される当選報告。それにしても政治家は同じような顔つきをしている。信用のおけない威圧的な脂ぎった顔。少しでも良く見せようと取り繕った笑顔。どうしてこう揃いもそろって同じような顔になるのだろう。

 管元官房長官ドラグナーに似ている。沼や水辺に潜む屍鬼鈴木邦男さんはグールか。それでは豊田真由子はさながらレイスだな、今夜も例の金切り声を上げるのだろう。ところが彼らに鋭い質問を浴びせる池上彰さんもボッチリングによく似ている。死産した胎児の霊だ。わたしとゲラルトは、そいつら屍鬼や幽鬼をまとめて切りつける。

 

 月曜日。選挙が終わっても何も変わらない。誰もが口々にそういう。当然の結果。当たり前だ。政界の構図は少々変わったのだろうが、奥で糸を引く黒幕達は揺るがない。阿部さんの不適な笑いも不気味だが、ワイルドハントほどではないだろう。だがウィッチャーの眼はいつでも嘘を見抜く。消えた足跡も残り香も。突き止めて追い詰める。

 クロウパーチの血まみれ男爵がいう「おまえたちウィッチャーにはわからんだろうが、俺たち人間には白か黒かで決められないことがある」その通り。どんな世の中にも白と黒との間を別つ灰色の帯がある。選挙が終わってどうですか?その帯、灰色の部分がまた太くなってませんかね。

 だがそんなことはどうだっていい。今のわたしは何も気にしない。政治のこともこの国のことも。気になるのは、あの晩ゲラルトはキーラと寝るべきだったのだろうかという疑問。それに傷を負ったシリの行く末。

 

 火、水曜日。時間はすぐに流れる。台風は去り、世の中は通常運転。これから本格的な木枯らしは吹く。わたしはすでに寝不足ぎみ。クライアントからいくつかの赤字が入る。大した仕事でもない。グウェントで勝つよりずっと簡単だ。カードの手札は見えている。わたしにはまだまだやることがある。心はすでにヴェレンの大地にある。コカトリスもフィーンドもすでに倒した。グールも野犬もすでに驚異にはならない。わたしはプリントアウトしたPDFは直ちにイグニで燃やし、愛馬ローチに跨がり走っている。

 

 そうそう「癒し」。これがテーマだった。だがゲラルトの世界に癒しはない。その世界には、無駄に巨乳の女戦士も、ロリ顔の相棒もいなければ、ガリガリの身体で物理を無視した大剣をもつホスト風の剣士もいない。戦禍はどこまでも迫ってくる。疫病があり、禍々しい呪いがあり、農民はみんな飢えている。悪い魔女や嘘つきや醜い怪物で溢れている。

 けれど彼は狼の眼をもっている。金色に輝くウィッチャーの瞳。何でも見抜く鋭い眼。それから彼はふた振りの剣を持っている。銀の剣と鋼の剣。人と人成らざる者、両方を切り裂くふた振りの刃。

 そいつをもって、わたしと彼は、今夜も世界を渡り歩く。荒野を、森を、沼地を。くだらない政治も、変わらない世の中も、目をそらさずにその眼で見抜き、嘘も甘い誘惑も退屈な仕事も、すべてを切り裂く剣を持つ。冒険ははじまったばかり。