ナマケモノの飛行訓練

記憶のすべてがかすんでみえる。うろ覚えでつづるひこうくんれん。

カズオ・イシグロの印象

 カズオ・イシグロノーベル文学賞を受賞。

 わたしにとってのノーベル文学賞は、絶対にハズレのないものすごい作家さんを世界中から紹介してくれる賞、という位置づけで毎回期待しているイベントだったので、すでに知っていて、それも売れっ子の作家さんがこの賞を取ったことには、それなりに感慨深いものがある。

 

 ずっしりと重く高カロリーだがなにもかも一流、という印象のノーベル文学賞が、もはやボブ・ディランという飛び道具を選出した経緯を考えると、カズオ・イシグロさんの受賞はなんの違和感も抱かない。けれど、やはり文学はなんとなくだが世界的に低カロリーになっているように感じる。

 

 カズオ・イシグロさんの文体を例えるなら、「これといって顔が良いわけでもないが、人当たりもよく清潔で、ものすごく白くて歯並びの良い好青年」という印象(あくまで私見で)。そこまで強い個性を持っている感じではない。

 同じクラスには「めちゃくちゃ派手でお喋りだが、なにを言っているのか分からない、それでもなぜか人気者」のガルシア・マルケスや、「普段無口だが、口を開くと毎回驚愕の事実を発表する」クッツェーや、「ものすごいロマンチックな物言いで言葉そのものが詩のようだが、一部の女子には気持ち悪がられている」川端康成や、「常識的で優等生だが実はクラス一のど変態」の大江健三郎とか、「同姓からの人気は高いが授業中に隠れて酒を飲んでしまう」ヘミングウェイとか、「すごい世界観を持っていながらそれがあまりにマニアックなので、いまいち理解されない」フォークナーとか、おまけに、「スナフキンを地でいき、いつも授業には参加しないのに、なぜか単位は取れている」ボブ・ディランがいる。強烈な個性を持ったクラスメイトのいるなかで、カズオ・イシグロの存在はやはり薄い。

 

 それから、これまでわたしは「絶対に受賞しない派」だったが、ボブ・ディランカズオ・イシグロ、この流れを鑑みると、もしかしたら村上春樹の受賞もあり得るかもしれない。と、なんとなく勝手な推測を立ててみる。

 あるいは先の二人は、村上春樹を選出して超人気作家に日和ったと世間から指摘されたくなかった選考委員会が取った布石だったではないか。と、ものすごい邪推をしてみる。

 だがもし村上春樹が受賞するならば、先にミラン・クンデラが受賞してほしいし、それをいうなら、カズオ・イシグロが取ったなら、ル・グウィンにもあげてほしい。あくまで私的には。で、その後で、ハルキストたちが歓喜する様を眺めてみたいものだ。

 

 思えばなんだかんだでカズオ・イシグロの作品はかなり読んでいる。 

 いちばん好きな作品はこれかなぁ。

わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)

わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)